[コメント] ライトスタッフ(1983/米)
決して映画の完成度は高くないが、実話の重みを軽妙なタッチでさばいてあきさせない。死と直面しながら時代におもねていく宇宙飛行士と、孤高のパイロットの双方を描いて感動的。
20世紀後半、テクノロジーは、社会に劇的な変化をもたらした。この映画は、その変革を先取りしたものと、取り残されたものとをよく描いている。
イェーガーは、「技能者」である。別の言葉でいえば「職人」。自分の手で飛行機を操り、限界を極める。修練の末の孤高な求道者。チームプレーは限られており、コミュニケーションは不要である。古い社会は、この「技能者」達によって支えられてきた。
一方、宇宙飛行士たちは、新しい「技術者」。より複雑な問題に取り組み、役割分担に基づくチームプレーを行う。そこではコミュニケーションを始め、さまざまなスキルが要求される。
最初「技能者」達は、宇宙飛行士と猿とを同列に扱い笑った。しかし、宇宙飛行士は、カプセルを飛ばすことが仕事ではない。卓越した身体能力を持ち、選ばれたヒーローとして国民の支持を得るとともに、メディアとのインターフェースや地上からの指示役など、さまざまな知的役割を演じなければならない。
「ライトスタッフ(正しい素質)」とは、これら宇宙飛行士たちに要求された、幅広いスキルを示す。ここに代表される「技術者」のチームプレーが、このあとのアポロ計画を成功させ、社会を変える原動力となっていく。
しかし一方、イェーガーの個人プレイは、いまだにわれわれの憧れを掻き立て、共感を生む。それは「男のロマン」であり、「技術者」たちの心の片隅にも息づいているのだ。この映画、「技能者」の敗北を描きながら、彼らにも暖かい目を向けていて、われわれを感動に導く。
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