[コメント] 五月の七日間(1964/米)
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バート=ランカスター、カーク=ダグラスと言った軍服のよく似合う男たちを配し、作り上げたポリティカル・アクション作品。軍人がメインだとは言え、主題はあくまで政治的な事柄に限定されるので、ほとんど会話のみで構成されるのだが、それが本当に緊迫感がある。それ以外にも最初の内、弱腰の大統領としか見えなかったフレデリック=マーチが中盤辺りから人間的弱さを必死に乗り越えようとしている描写があったり、飲み助親父だったエドモンド=オブライエンが自分との戦いを経て力強く立ち上がる姿など、キャラクターがとにかく練り込まれているので、特に中盤以降は目が離せなくなる。オチが途中で分かってしまうような作りは、ちょっと映画としては稚拙だったかも知れないけどね。
アメリカは共和党と民主党の二つの政党がしのぎを削っているが、その主張の中心はこの強いアメリカをどのように運営していくかと言う点にある。極端に(そして乱暴に)二つの方向性をくくってしまえば、国益を最重要課題とし、他の国全てを仮想敵国として、あるいは世界警察と言う位置づけを明確に打ち出す方向性。そしてむしろ重要なのは社会対策とし、国内のみならず対外的にも福祉を明確に打ち出す方向性。方向性が異なるとは言え、いずれにせよ、対外的には「強いアメリカ」を強調する方向性は確かなようだ。ただ、子供的な対応をするか(他の国は大概この対応しかできない)、大人としての対応をするかの違いとなる。
ライマン大統領はその意味では冷戦下で極めて大人の対応をしたと言えるのだが、敵国であるソ連がどのように対応するのかが分からず(実際反共精神の強いアメリカだから、ソ連国内で一体何をしてるのか分かったものではない。と言う主張が出るのは当然だ)、その恐怖が支持率の低迷を引き起こし、そして軍部によるクーデター計画まで引き起こしてしまった。客観的に見れば良い事をしたとしても、それがかえって世情不安を引き起こしてしまい、結果的には余計平和を脅かしてしまったと言うのも確かな話。国の運営というのは本当に一筋縄ではいかないものだな。
まさしくアメリカという国の持つ不安定さを明確に映像化したため、ストーリー的にはいくらハッピー・エンドでも、この作品のラストは後味が悪い。この時代にこんな作品を作る事が出来た事を讃えたい。後年作品が崩れてしまったフランケンハイマー監督だが、この頃の作品は本当に輝いていたと思う。
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