[コメント] ベニスに死す(1971/伊)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
原作の拡大解釈だが、これほどまでに映像に迫力があると全く原作のことなど問題とならない。
ダーク・ボガードとタジオの出会いから最後の死に至るまでの葛藤は、この上流社会に存在することの苦悩に似ている。そして少年を愛することと打ち明けること、これ普段は男女の恋愛などでよく使われるが、壮年期の男と少年という関係はいかにも純文学的で映画ではそれが見事に映像の中で咀嚼されている。
ホテルの一室、窓を開ける、そしてその向こうに見える海の景色、風が入り込みカーテンがたなびくなど、あらゆる表現の奥ゆかしさを網羅している。
再見 テアトル銀座にて
映画館でこの作品を何度見たことか。
再びニュープリントで見たこの作品は全く衰えることなく、見る者に同じ感動を与え続ける。
そして40年という歳月。
映画に魅せられて、映画が大好きで、毎週のように通い詰めた映画館。
そんな青年時代からはや40年。
当時タジオの年齢に近かった自分がいつの間にかアッシェンバッハの醜い年齢に近づき。同じ映画でも目線が異なる。
老いと孤独
この映画は最初から題材が同じなのに、自分に老いが近付くと全く違う感動が押し寄せる。
化粧をしてドロドロの化粧が溶けて、真夏の暑さで醜さを増長する。
海の向こうではタジオが波と戯れている。
そしてアッシェンバッハに訪れる死の瞬間、タジオは対応に向かって指をさす。
ああ・・・この美しいシーン。そして醜いシーン。このラストを何度見たことか。
見れば見るほどどんどん自分の中に別の世界が生み出される。
この感動は死ぬまで続くのだろう。
それにしてもシルヴァーナ・マンガーノの美しいこと。彼女をほんのり鑑賞できるだけでこの映画は宝だ。
彼女の夫はディノ・デ・ラウレンティスなんですね。
あらためて驚きます。
ルキノ・ヴィスコンティとは『異邦人』という作品で組んでますね。
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