没個性的な奴らばかりだから、登場人物の誰一人として感情移入できない。だから疑心暗鬼の感情が見ているこちら側にも伝染する。ヒゲを生やしたヒッピー崩れみたいな風貌のカート・ラッセルも、主役というよりは「狂言まわし」の役割に近い。「血液自体が生きてるっぽいし、しかも火に弱そう」。そんな「生き物」の生態と習性を目で観察しただけというはなはだ薄弱な根拠に基づいて、科学的裏づけもないまま全員を縛りつけて採決検査をしちまうところなんかまさにそう。

見ているこちらも「そんなんでうまくいくんかい」とウサン臭さを拭いきれないから、シャーレのなかの血が出しぬけに飛び跳ねたときはマジでビックリした。文字通り俺も飛び跳ねた。何となく嘘臭さを感じていたものがにわかに真実味を帯び始め、おぼろげな不安が現実的な恐怖に豹変する。ウサン臭さとチープさを逆手にとった絶妙の恐怖演出。こんなんマネしようと思ってできるものじゃないし、狙ってできるものでもない。根っからのB級魂カーペンターならではの力業ですな。