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[コメント] ナビィの恋(1999/日)

コピーの「私があなたに惚れたのは、ちょうど十九の春でした」に負けず劣らずの、おじいの名セリフの数々、「ランチはトゥエルブ・フォーティーに…」
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







素直によくまとまった作品だと思う。

解析などしたらつまらないかもしれないが、本作の面白いところは親の世代を省いて(ほんの少しだけ父親はでてくるが)、祖父母の世代と孫の世代の話にしたことであるかと思う。そして通常の若者の恋愛物と違い、孫の世代よりも祖母のほうが激しい恋愛模様を繰り広げるところである。(通常なら祖父母のほうが孫たちを見送る立場のところを、逆にしている)

家でのシーンで多用された横の構図(出航のシーンでも用いられていた)は素晴らしかったし、夜の浜辺の撮り方は妙な妖しさがあった。

そして皆様御指摘のとおり、おじいを演じる登川誠仁が最高。軽口をたたきながらも、一番過酷な運命を迎えなければならなかったおじい、西田尚美演じる奈々子が若者と抱きついている場から離れるように歩いていくおじい、そんなおじいを少しだけカメラが追う(ここでも横の構図が光る)、そこでおじいのメガネの渕が少し光るがそれはあるいは涙だったのかもしれない。

と、ここまでは4点か5点に値する作品である。しかし、いくら立場を転倒させたとはいえ、下の世代にいけばいくほどぞんざいな扱いになっていくのは話を底の浅いものにしてしまった感がある。あのコドモ集団のステレオタイプな描き方が一番酷く感じたが、まあそれはメインではないので脇においておく。肝心の西田尚美村上淳の恋愛は盛り上がりに欠けた。特に村上淳のキャラクターは常に受身なだけで何を背負っている人なのかが見えず、ともすると薄っぺらく感じる。(西田尚美のほうもたいがいだが)いくらタイトルが『ナビィの恋』だからといっても、このあたりを背景を交えながらしっかり描いていったほうが話に厚みがでたであろうし、何よりもおじいのあの独特の「軽み」(実際はけして軽くないのだが)が活きてきたと思う。

かなりいいイメージだけが残っていたが、話全体をもう一度観返してみると非常にからっとしすぎている印象がある。おじいの存在同様、もっと話に重み(暗さでもよい)があると、沖縄の陽光や花などが引き立ったのではないか。沖縄出身(なんですよね?)の監督中江裕司が抱える暗の部分を個人的には観てみたい、そういう部分がほんのわずかだけフィルムに浮かんでいたような気がするので。(★3.5)

*夜の浜辺のシーンの前の、黒に何かがうかびあがるようなあれは何?

(評価:★3)

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