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[コメント] プレイス・イン・ザ・ハート(1984/米)

今から観ると蒼々たるキャストですが、実はみんな本作でブレイクしたという事実。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
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 1980年代は進歩的な時代であり、且つ若者にターゲットを当てた作品が連発して作られた時代だった。具体的に言えば、派手な演出と意外性のあるストーリーが好まれた時代と言えよう。事実この時代に生まれたスターの大半はアクションスターだったし、SFXの進歩によって多くの映像改革も行われた。

 ただ一方では、その時代の流れに否定的な、古い時代を振り返る懐古趣味の作品も意外に結構な数作られている。どんどん離れていく家族関係の危機感がそれを呼んだのかも知れない。派手な作品に押されてしまい、今ひとつ目立っていないにせよ、実は良作は結構多い。

 特にこの1984年はその方向性が顕著な年で、この年はアメリカの田舎。しかも天災に遭って困窮する家族を描いた作品が連発して作られた。『カントリー』、『ザ・リバー』、そして本作と3作もあり、ヒロイン三人が全員アカデミー女優賞にノミネートしている。逆境に耐え、子供達を育てたくましく生き抜く母親像はアメリカ映画の伝統的スタイルで、映画の初期から現在まで脈々と作られ続けているパターンではあるが、それが年に3本というのはかなり興味深い。それだけ危機感が強まった年だったのかも知れない。

 そしてその3作の中で見事オスカーを射止めたのが本作の主役サリー=フィールド。接戦を制した形になるが、それだけ本作の出来が良かったことをよく表しているだろう。

 現時点では私はこの3作中本作と『ザ・リバー』を観てるが、明らかにこちらの方が面白い。フィールドのキャラクタ性がよく出ているのみならず、脇を固める俳優達が抑えた演技でフィールドをしっかり支えてくれたのが最大の原因だろう。グローヴァー、マルコヴィッチ、ハリスと、今となったら蒼々たるメンバーだが、彼らはみんな本作で一躍有名になったのだ。決して出しゃばらずに、しかもしっかり個性出してるし、彼らがいたからこそ、話に厚みが出ている。

 演出も綺麗で、季節と気候によって次々に変わる綿畑の表情とか、人の移ろいと気候の関連とか、様々な所で凝った演出がなされているのが特徴だろう。KKKが出てくる所の怖さなども充分に良かった。特にラストの教会のシーンは名場面の一つ。

 本作は1983年に設立されたトライ・スターの作品。本作と同年に投入された『ナチュラル』で、ハリウッドの良心的製作会社というイメージを確立した。今でもペガサスの絵を見ると、当時のトライ・スターの諸作品を思い出す。それぞれの年代にそれぞれ特色を持った準メジャー会社があるものだが、今から考えると、80年代を代表する準メジャー会社ではやはりこれが抜きんでてた会社だったな。

(評価:★4)

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