[コメント] ミツバチのささやき(1972/スペイン)
「死」から一番遠く、且つ、一番近い距離にいた、柔らかい陽射しに守られていたあの頃…虫眼鏡で蟻を観察しているフリをして、焼き殺したりしたことありませんか?
―「そして、子どもが最も神に似るのは、折角造っておきながら、惜しげもなく、それを崩し去る時だ。」―原知満子
死体を見つけに行く『スタンド・バイ・ミー』然り、子どもにとって「『死』の拡大」とは重要な仕事。それが故に、innocenceという「盾」と「武器」を持って、子どもは破壊的で無秩序な存在でいることを「神」から保証されているのでは、と思う。「聖なる暴力」とでも言おうか。また、だからこそ、子どもの容姿は「天使」や「小悪魔」に喩えられるほど、愛くるしく、抵抗しがたい魅力を持つのであろう。
この作品全編に流れる、牧歌的ながら、どこか胸がゾクリと不安にさせられる要素を持つ、その眼差しは、まさに少女を見つめる「神」の眼差しと、またその存在自体が最も「神」に近い少女の眼差しが、微妙に平衡を保ちながら渾然となっているからではなかろうか。言うなれば、リミナリティー・境界線の美しさ、色が溶け合う地平線の美しさ、であろうか。
「奇跡」と言えば「奇跡」。
「『生』の拡大」ばかりに固執する大人になってしまった自分にとっては、何度も、できるなら映画館で、見直したい一本である。
* ハシヤ氏が指摘する、『柔らかい殻』はこの作品の裏オマージュであるという意見を、僕も支持する。
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