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[コメント] パンと恋と夢(1953/伊)

鑑賞後、本作がベルリン映画祭金熊賞受賞作品であることを知った。このラブコメのどこを評価したのか、少し考えてみた。  
KEI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







田舎の村に赴任してきた主人公の警察署長。白髪が出て来る迄仕事一筋の人生だった。「警察の仕事は大変忙しく、実際署長になるまで妻を持てない」と言う。それなりの女性経験は有っただろうが、女性とのキョリが上手く掴めない男だ。

大した事件もないのどかな村でのドタバタ騒動が綴られて行くが、その署長が最後にこの人ならと思ったのは、中年の産婆業の女性だった。しかし彼女には‘秘密’があった。(この秘密が、この映画の要だと思うので、具体的には明かさないでおこう)。

その‘秘密’は現在(2021年)なら何という事のない(とは言い切れないかもしれないが)で、よく聞く話だ。

しかし、本作品の製作年は1953年(日本なら昭和28年)だ。そんな‘訳あり女’はタブーで、表沙汰になれば村八分は免れない、そこに住み続けられないという事柄だったに違いない。

本作はそれをテーマにしていると思う。真正面から描けば、暗くて重い。真面目に考えれば考える程、シリアスな作品になっただろう。本作は、逆にそれをコメディの中に置いて、軽く1つの主張に導いた―‘立派な事じゃないか’と。上手い脚本だ。

更に言うと、もし彼女に過去から引きずるモメ事があったなら、その時には警察署長という肩書がモノを言うだろう。そこまで考えて、主人公を署長にしたのかもしれない。

件(くだん)の女性が、打ち明け話をするシーンがある。署長と共に聞いている我々観客も「えっ、そうだったのか・・・」と言葉を失う。がその後署長が言う、「立派なことです」。私は―いえいえ、署長あなたも立派ですよと言いたくなった。

やがて、結婚する時、家族紹介の時、署長が村の人たちに何と説明するか、どんな嘘で繕うのか、それを想像するだけで楽しくなる。

(評価:★4)

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