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[コメント] ストレイト・ストーリー(1999/米=仏=英)

「人生の収穫日」に自らトラクターで向かい、その日を家族と迎えること。たびたび挿入される麦の収穫の空撮と星空が命の連鎖を想起させる。いつにも増してセンチメンタルなバダラメンティのスコアと柔らかく優しい撮影が遂に陽光から禍々しさを除き、何より一片の星影も闇の中に認めたことのないリンチが、ロストハイウェイの爆走の果てに見出した星空に嘘はない。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







追い越したと思ったヒッチハイカー(家出娘)がキャンプ中に追いついてきたり、自分を追い越していった自転車レースの集団のキャンプに自分が追いついたりと、一見ノロノロしているかに見えるストレイト翁のトラクターが軸となって人生の普遍的な「スピード」を提示する。それは苦しく、同時に心地よくもあり、静かにしかし確実に前に進んで行く。そこにいくつかの後悔はあるが、焦燥も虚無もなく、ただ優しさだけが在る、という澄み切った境地。

滋味がありすぎるほどの会話シークエンスと移ろう風景だけで私はどうにもこらえられず、遂に辿り着いた彼岸で流される涙、とりわけ私はハリー・ディーン・スタントンの涙に色々な意味でやられてしまい、「深淵を覗く者」が提示する光に常に弱い私には、この感動に抗うことは全く無意味でした。あと、シシー・スペイセクが電話シークエンスののち登場しないのも、思い出すと泣けてくる。

※ まあ、『デューン』は「星」のうちには入らないでしょ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)おーい粗茶[*]

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