コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] クリフハンガー(1993/米)

バーティカル・リミット』がつまらなかったのは、彼がいなかったから。
kiona

 たいていのハリウッド超大作が面白くないのは、人間が描かれていないからではなく、人間の温もりさえ伝わってこないからだ。映画には概ね二時間枠という物理的な限界がついて回る。単純に考えたら、二時間真剣に人間について懊悩する作品に、スペクタクル・シーンに時間も労力も費やす娯楽映画が追いつけるはずがないのだ。だから人間がろくに描かれないことに文句を言えないところもある。ただ、それでもそこに出ているのが機械でもCGでもなく、まがいなりにも人間であるならば何かしらの熱を感じさせてほしい。

 プロフェッショナルな俳優達は、CGの添え物であるなら、添え物であるなりの仕事をこなす。だが、もっとドラマを中心とした、その後の作品への復帰を念頭に入れない日はないだろう。スタローンをはじめとするアクション俳優達や、それ以上に彼らを影で支えるスタントマンたちにとっては、アクションの現場こそが居場所なのだ。

 ここまで進展した映像技術をもって竜巻を、大嵐を、火山を、宇宙を、沈没を、或いは戦闘シーンを描けさえすれば、あとは面の皮として人気者を連れて来い、アイドルを連れて来い! そんな、風潮が気に入らない。キャリアのために出てきては、後年になって自ら作品を酷評しながら弁解しているアイドル達が気に食わない。そこに本来いるべき連中の居場所が奪われつつある、その現状だけが呪わしい。

 スタローンは、頭悪そうで、不器用で、実はけっこう弱そうで、ジャッキーのようにその道を極めた達人というわけでさえない。だからこそ、俺は彼に人間の熱を感じずにはいられない。どんな作品を見ても一回は本気で困ったような顔をするヤツを、いつも気がつけば本気で応援している。嘘みたいに強いことがなぜか肯定されるシュワルツネッガーや、要領の良さでとっとと困難を打開するブルース・ウィリスには感じないドラマを、彼の存在自体に感じるのだ。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (10 人)死ぬまでシネマ[*] 1/2(Nibunnnoiti[*] けにろん[*] ゆーこ and One thing[*] アルシュ[*] 甘崎庵[*] peacefullife[*] らいてふ ペンクロフ[*] ina

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。