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[コメント] 東海道四谷怪談(1959/日)

各スタッフの創意に満ちた仕事に敬意を払いたい。鮮やかに暗い色彩。とりわけあの水の色はなんだ。あのような水の色が平然と受け容れられる作品世界でならば何が起ころうとも不思議ではない。顔面が変形してのちの若杉嘉津子の前衛舞踏のような気味の悪い身のこなし! 花火のカットの鮮烈さ!
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また、映画を知る演出家なら誰しも「反射物」や「遮蔽物」「透過物」の扱いには敏感なものだが、ここでの画面奥を遮蔽しつつ透過するものとしての「蚊帳」の効果は絶大だ。蚊帳によって空間に醸成される幽玄な禍々しさ。これは最高の蚊帳映画だと云ってもよい。(ほかに「遮蔽しつつ透過するもの」として私に即座に思い出されるのは、黒沢清における半透明のカーテンです。「遮蔽しつつ透過する」とはすなわち「見せつつ見せない」ということですが、それはホラーというジャンルが要請する画面でもあるのでしょう)

カメラワークには流麗さよりもむしろある種の意地のようなものを感じる。それは「ここは何が何でもワンカットで撮る」という意地であり、ひいては「低予算であろうと面白い映画を作る」という意地だ。プログラム・ピクチュアの豊かさを噛み締める。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)寒山拾得 ぽんしゅう[*]

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