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[コメント] アギーレ 神の怒り(1972/独)

私にとって本作は映画史上有数の怒涛の映画です。しかも、海の怒涛はけっこうありますが(例えばフラハティの『アラン』が凄い)、こゝでは川のそれが描かれているので希少価値があります。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 この怒涛は、前半、隊が岸辺で待機している際に想像を絶する画面として登場し、この後待ち受ける苦難を予期させ観客に不安を植え付けます。ただし、分遣隊が川を進むにつれて、川は静かな流れとなり、圧倒的水量として画面に定着はしているけれど、静謐さが基調となります。そして後半は静けさの中での運動の停止−死−を支配する背景として対比的な川の描かれ方をします。といったことで、前半の怒涛のスペクタキュラーは帰結へ向けてのコントラストをもたらすことに見事に機能していると私は思います。

 また、もう一つコントラストということで云っておきたいのは、巻頭と巻末のカメラアイの対比です。いずれもどうやって撮ったのだろうと思わせる、現場の苦労が想像に難くない驚愕のショットです。オープニングは断崖絶壁から山間の隊列を小さく捉えた大俯瞰ショット。エンディングは川面の筏を水平に捉え続けながら、その回りを滑らかに2周ほど移動するショット。いずれも神の視点(言い換えれば監督・ヘルツォークの視点)に間違いなく、またいずれも被写体を突き放した眼差しなのですが、対象への肉薄の度合いの違いが、良い対比をなしています。突き放してはいても、ラスト、神はアギーレを見守り続けるのです。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)DSCH[*] ナム太郎[*] Orpheus 3819695[*]

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