[コメント] ファール・プレイ(1978/米)
演出には何の厳しさもないが、この作品にはそんないかにも70年代な型にとらわれない自由な雰囲気が合っている。当時の風俗ネタを多く取り入れつつも、大胆かつ巧妙なサスペンスタッチは不変のものであり、今日でも十分に面白いといえる作品となっている。
全篇ノーブラながらまったく色気なく、むしろ健康的なお馬鹿ぶりを発揮するゴールディ・ホーンや、ここぞという時に登場し、笑いとともにその場を持ち去っていく変態役ダドリー・ムーアらの個性が生かされた佳作。いかにも70年代な型にとらわれない演出が、むしろよい方向へと転じたあの時代ならではのハチャメチャさが楽しい。
監督のコリン・ヒギンズはハル・アシュビー監督のカルト作『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』やアーサー・ヒラー監督の傑作『大陸横断超特急』の脚本で名を馳せた人だが、初監督作となった本作もヒッチコック好き(と思われるというか、確実にそうでしょう)の彼らしいアイデアに溢れており、最後まで飽きさせない。例えば映画館であれだけの観客の中死体が突然消えるなんてことは理屈のうえでは考えられないことなのだろうが、そんなことお構いなしに先へ先へと話を転じる大胆さも魅力だ。
また、『ブリット』ばりのカーチェイスや、『ロッキー』の バージェス・メレディスによる『燃えよドラゴン』ばりのカンフーアクションなど、一世を風靡したヒット作からのパクりの数々や、民間レベルでの行き来もが盛んになった日米関係を象徴するかのような日本ネタなど、当時の状況を生かしたアクセントも効いている。
バリー・マニロウの甘い歌声も懐かしかったが、準主役的なチェヴィー・チェイスにほとんど見せ場がないのだけはお気の毒。
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