[コメント] 幻の湖(1982/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
犯人の作曲家(つーか刑法上、主人公の方が犯人なんだけど?)は、「地方から上京してきた若者の孤独を歌ったフォークソング」が大ヒットし、デビューしたらしい。しかし「本人はそんなものには実は何の興味もない(さる機関の情報より)」
要するにこの人は自分のポリシーとは何の関係もなく、今最も世間にウケそうなものを発表し、ヒットさせるという芸術家というよりはマーケティングによって事業を成功させるタイプの人である。最近ヒットする映画、歌、小説などを見ていると、現在そうした人々の活動がほぼ多数を占めているのがわかるだろう。
長年日本映画の重要な部分を背負っていた大ベテランの橋本忍監督(以下スタッフ、キャスト一同)はこの時すでに、そうした状況が我慢ならなかった。 そこで、世渡り下手でほとんどまったく誰からも理解されそうにない極端な情念を持った女性(橋本氏の側)が、世渡りのうまい金持ちの似非アーティストをぶっ殺す、という話を作り上げたのである。
この映画がそうした「似非」の部分にきびしいのは、ヒロインの殺意が犯人に遭遇した時点ではまだ定まらず、犯人が「いやーいいねえ、琵琶湖に沈んだ女の情念なんてね〜」とか軽々しく話しはじめた時だということでも分かるだろう。
確かにこの映画のストーリーは飛躍のしすぎで着いて行けないが、芸術家というもの、この映画のヒロインなみの不可解さと強引さが必要であろうことはよく分かる。 またこの映画の映像のレベルは高く、琵琶湖、十二面観音像の美しさ、ジョギング対決のカメラの的確さなど、現在の日本映画では望むべくもない。
それにしてもヒロインの最後のセリフ「お前が・・・○○を語るなんて!」の○○の部分に色々当てはめたい人もおられるだろう。『デビルマン』『キャシャーン』『ゴジラ』・・・・
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