ワイガンドの告発は「科学者としての良心」ゆえだったのだろうか。

いや，それだけではないはずだ。あれはずたずたにされたプライドあるいは踏みにじられた自尊心ゆえによるのではないかと思う。

良心は時に麻痺することもあるが，プライドは人間が生きていく上で不可欠な“無形燃料”である。決して麻痺させてはならない。

だからやった。後悔していない。もう一度でもやる。新たな“燃料”を求めて，傷ついたプライドは怒りの炎を燃やす。

ワイガンドの描写の中で彼と家庭のあり方について示唆するためか，キッチンや食事のシーンが殊更に多い。

だが告発と引き換えに，その家庭を失う。

新たな火種を求めて燃え続けた代償。家庭とプライド。どっちをまず守る？

男としてこれは究極の選択だ。

バーグマンのジャーナリストとしてのプライドも傷ついた。だから「辞める」と言う。

これも「ニュースソースからの信頼が得られない」だけではないだろう。あそこではもはや自分を燃焼する事ができないのだ。

男として生き続けるために，もう一度誰にも負けない炎を燃やすために新天地へ。

結果どうあれ，プライド賭けて燃焼し続けた二人の姿は，問答無用でカッコイイ。