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[コメント] モダン・タイムス(1936/米)

様々な意味でのチャップリンの抵抗物語。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この製作年代は1936年。しかし、これは現代でこそ観るべき価値がある作品ではないかな?機械化された工場は人間性を失わさせ、必死に働いて得たのは精神の病。しかも外には失業者の群…何故か私の友人の多くはこのどちらかに入っているのだが…

 この卓越した視点こそチャップリンの面目躍如たる部分。前半部分は便利なはずの機械に良いように使われている人間の姿が描かれ、後半は必死に働こうとして、努力では如何ともしがたい現実の世界が描かれている。それらを徹底的に笑いの中に封じ込める。上手いねえ。

 ところでこの作品はチャップリンが山高帽、ドタ靴、ステッキと言ういつものスタイルの最後となった作品だが、ここでは映像的にもチャップリンの様々な抵抗が描かれている。この作品の大部分はパントマイムなのだが、部分的にトーキーが取り入れられている。ところが最後までトーキーの流れに抵抗しようとしたチャップリンは唯一自分で言葉を喋るシーンで意味不明の歌を歌うだけ。“トゥラトゥラトゥラワー”というのがチャップリンが映画で初めて語った言葉。と言うのも面白い。又、この作品から本格的に導入された合成技術。スペクタクルとして挿入されるシーンが単純なお笑いになってしまうのも良い。

 少女とチャーリーの二人になってからの物語は、愛の物語と取られることが多いようだが(事実ゴダードはチャップリンの妻だが)、食事シーンはままごとそのまんまだし、寝るのも別居(?)という清い関係。結局チャーリーは彼女のことを女としてではなく、自分が保護する対象としての愛情だったことが窺える。ラストシーンはしょげる少女に対し、力強く、そして陽気に、一緒に生きようと言う力強いメッセージだが、これも又、チャーリーが生きる力を少女に与える。と言う風にも取れる。単純なラブ・ストーリーになっていないのも特徴。

(評価:★4)

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