もう、どこをどう斬っても全部見事。スリラーには厳しく近年同じ役者にオスカーを与えるのは拒みがちなアカデミー会員が文句無く作品賞と主演賞を、あげてしまったのに納得。原作自体が巧妙で独特の緊張感を醸すベストセラー・サイコサスペンスなのですが、それを申し分無くきっちり映像化した監督に拍手喝采。評価の高いホプキンス演じるレクターは狂気と品位のバランスなど確かにインパクトありますが、基本的に悪役は演じやすい。むしろ苦悩するヒロインジョディ・フォスターの繊細さと強さを併せ持つ正義感溢れるクラリスの方が演じるのはテクニックがいる。全くスクリーンで最初から最後まで張り詰めた糸のように緊張感を無くさずに硬質な演技を披露したジョディを称えたい。結局彼女は包容力溢れるフェミニンな役柄よりはこのクラリスや『コンタクト』等で見せた理知的で好奇心を秘めた役柄がベストフィットする。にしても本作が、あまりに完成度の高い作品であるが為に続編がそこそこでも異様にチープに感じてしまう。あなたにとって、ラストが解ってしまっても何度も観たくなるサスペンスって幾つもありますか？。名作。