[コメント] 羊たちの沈黙(1991/米)
ドラマが劇的すぎて真に迫る怖さに達しきれないSO-SOスリラー
確かにジョナサン・デミのストーリーテリング、カメラワーク、カラーリングなどの演出効果が覿面に作用し、また主演二人の演技力もあって、一線級のスリラーに仕上がっているのは論を挟む余地はない。しかし、なにか物足りなさを感じてしまうのは、今作においては、素材を素材以上のものとすることができる力をもった演出・演技の両輪があまりに突出したために、素材の持つドラマティックすぎる構造との間に思ってもみないギャップが生まれ、そのあまりにも劇的にすぎる構成ゆえに、全体的な印象がどこか嘘っぽい、まがいものめいた感覚が拭いきれないもったいなさが残ってしまうのだ。もし、本作のポジショニングをもう少しクリエイティブな路線で強調していたとなると、余程の傑作となっていただろうと思われる。エンターテイメント性を忘れないというお題目で間口を広げ過ぎた点が玉にキズといった所か。しかし、性格俳優というレッテルを本作で不動のものとしたアンソニー・ホプキンスであるが、強いて言えば、もう少し抑制が利いていてもよかったかとも思う。ただ、顔面であれだけの感情を表現することのできる演技は流石の一物であるし、その立ち居ぶるまいはジャック・ニコルソンではやはり不可能である。
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