息子のモハメドが口にする「神様は見えない人のほうが好き」という言葉。それは間違ってはいない。

なぜなら、真に見えなかったのは父親のほうだから。自分の幸福を追い求めることに専心していて、息子や家族の大切さを忘れていたのだから。

祖母が亡くなり、自らの再婚話も夢と消えて、やっと父は気づいたのだ。今まで重荷に感じていた息子が、かけがえのない存在であることを。

川に落ちた息子を、自らも流されながら必死に追う父。たとえ今まで本当に大事なことが見えなかったとしても、気づくのがどんなに遅くなろうとも、最後に必ず、救いはやってくる。