[コメント] 独立愚連隊西へ(1960/日)
僕ら大衆はいつでも「己の命をぞんざいに扱う男」が好きです。その男が「命の重みを知って尚、己の命だけぞんざいに扱う男」であれば尚のこと。それが一個小隊で走ってくるんだからたまらない。
この映画の本質は当然「命の重さ」ってところにあるわけで、その点から観ると、登場人物は「命の重さを知っている←→知らない」と「己の命を大事にする←→ぞんざいに扱う」の二軸において四分化されていくわけです。「命の重さも知らないくせに、己の命だけは大事に扱う」奴もいれば、「命の重さを知っているからこそ、己の命も大事にする」奴もいる。なるほどこの映画には喜劇でありながら常に「死」の影が見え隠れしています。そして唯一無二の「命」というものへの比較対象物として「軍旗」が出てくるんですよね。
軍旗は一兵卒の命より重いのか。すると、命が等しく平等に与えられたものであるならば、全ての命は軍旗より軽いことになるのか。ならば軍旗を与えた者の命と軍旗ではどちらが重いのか。結局のところ「軍旗」っていうのは正に「旗じるし」のことを指すわけで、何を旗じるしにしようと、どんな御旗を掲げようと、命を捨てていい理由にはならないと。そんなテーマを重苦しいものとして扱わず、シニカルになりすぎず、あくまでも爽快なヒーロー喜劇に仕立て上げているのはスゴいなぁと思いました。
特に物語の冒頭のマラソン合戦のテンポの良さは素晴らしかった。何のために走っているのか誰も判らない状況の中、兵士の目に入るのは前を行く女たちのお尻だけ。そこから高速で切り替わっていく味方・敵・足・尻・味方・敵・足・尻。何だか訳の分からないパワーに押し切られて大笑いしながらも、同時にこの段階で既に物語の本質に入り込んでいるような気もしました。戦争喜劇の掴みとしては抜群だったと思います。
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