[コメント] イノセント(1975/伊)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ヴィスコンティは男性の女性的な面を上手に描く作家だったと思いますが、この映画のヴィスコンティは女性を女性らしく描いていますね。その理由はわかりませんが、言葉にし尽くせないほどラウラ・アントネッリが美しいんですね。ホントきれい!
かつて『ベリッシマ』という映画で必死に娘を育てようとする、いかにも庶民のイタリア女性を描いていましたが、これはまだヴィスコンティらしさが出ていません。もともとヴィスコンティは貴族の人です。庶民の映画を作っても、どこか他人ごとみたいな感じがいたします。
淀川長治先生が”アテネ・フランセ”で講演されていたお話が本になっていて(「淀川長治映画塾」)そこで先生は「ヴィスコンティはこの映画でイタリアのクラシック、活動写真を見せたかった。アンブロジオ社の活動写真を復活させたかった。」とお話されています。
この映画は確かに豪華なセットとわかりやすいお話を交差させて、主人公(ジャン・カルロ・ジャンニーニ)が自殺するまでを丁寧に表現していてわかりやすい。でも本来はもっと心情の行き来などが露骨に表現されても良いような気がします。さすがのヴィスコンティもこれが遺作。病状の悪化する中で撮影された作品ですので、力の衰えを感じてしまいます。
それでも私がこの映画を最初に見たのは14歳か15歳の頃でしょうか。当時の私としてはこれがとても衝撃で、ハリウッド映画中心の映画少年の目を覚まさせてくれるのには十分な作品でした。
ところでジャン・カルロ・ジャンニーニがここ数年『ハンニバル』や『007』シリーズで活躍されている姿を見てとてもうれしく思いますね。彼のこの映画の頃のイメージとは大いに隔たりがありますが、やはりイタリアの大御所に鍛え抜かれた重厚な演技は顕在ですね。
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