[コメント] みな殺しの霊歌(1968/日)
連続猟奇殺人事件を題材にした犯罪映画なのだが、コメディっぽい部分があり戸惑う。それは山田洋次が構成に参加しているから、という以上に脇役が松竹のお馴染みの役者陣(喜劇人)が故だろう。
多分、三村晴彦の脚本には喜劇的要素など微塵もないのだろうし、また、マンション管理人の渡辺篤と巡査・大泉滉のコンビ、犯人に疑われる会社員・石井均、クリーニング屋の夫婦、太宰久雄と石井富子、彼らもみんな大真面目に演じているつもりかも知れないが、どうしてもコメディの間合いが残っているのだ。ただ、加藤泰がこれをこのまゝ受容した訳だから、あえて題材とのミスマッチを残したと受け取るべきか。
ただし、カメラの視点は題材にマッチしており、見応え十分だ。全編通じて矢張り加藤泰らしく極端なローアングルが多いのだが、加えて本作は人物のクローズアップも多く、さらにディープフォーカスも多い。本作のディープフォーカスは手前の人物を近くに置き過ぎていないので、これ見よがし感の無い、力のある画面になっている。ショックシーンだとアバンタイトルが一番凄く、開巻いきなり驚かされる。應蘭芳の仕事はこゝだけだが、ナイスファイトだ。
#備忘
・ヒロイン−倍賞千恵子は『下町の太陽』から5年。『男はつらいよ』の前年、『白昼堂々』の頃。ほくろ?そばかす?が目立っている。倍賞のキャラは一貫性に難がある。最初は朗らかなのだが、境遇が語られてからはメチャクチャ暗くなる。また、佐藤允も倍賞に対してのみ大人しく、他の女に対する際とのギャップが大きい。ちょっと分裂気味だ。
・部長刑事である松村達雄の痔疾は山田洋次の発案のような気がする。すぐに、『なつかしい風来坊』の有島一郎を思い出した。しかし、松村達雄は決してコメディに見せないのだ。偉い。
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