[コメント] ネットワーク(1976/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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本作はSFとも社会批判とも言える作品で、視聴率獲得のためにしのぎを削っている当時のTV界を皮肉って製作されたものだろうが、ここに現れる狂気は特筆すべきレベル(尚、本作の脚本は元テレビドラマの脚本をしていたパディ=チャイエフスキー。TV界の内幕がよく分かってる訳だ)。
もちろんここで本当に狂気に陥っているのはフィンチ演じるビールに他ならないが、そんな存在さえも視聴率アップのためには喜んで使っていくというTV局の狂気。そしてそれに感化される無言の大衆(無言じゃないけど)の方向付けられた狂気。全てが狂ってる。
そしてその狂いっぷりがこの作品の肝であり、それを笑う私自身もなんか後ろめたい気持ちにさせるという、ブラックジョークとなっている。
テレビは洗脳装置と言われることがある。これを身に置き換えてみよう。しばらくバラエティ番組を観ていない状態で、久々にそう言うのを観るとよく分かる。笑いのツボが全然分からないのだ。テレビから伝わる笑い声に全然ついて行けない。これはおそらくテレビを観ている人間は、そこで「お約束」というものを知っていくことになり、その約束に従った笑いを提供されると、自然と笑えるようになる。というところから来ているのではないか?などと考えたりする(単に私が笑いを理解できないだけという可能性も高い。未だにドリフのコントが一番笑えるし)。
そう言う意味でテレビは一方的に「お約束」を視聴者に強要する。仮にその「お約束」が狂気であったらどうか?そして製作者側がそれが狂気と分かっていても、視聴率のために敢えてそれを流すならば…これこそブラック・ジョークだよ。
今やネット時代に入り、多くの情報が瞬時に手に入る時代になったが、この危険性は今も有効…と言うか、現代こそ実は最も危険な時代なのかも知れない。情報というのは常に人間を変えていくものだから。特にニュースサイトも並行してやってる自分自身が一番情報に振り回されてる人間だったりするしね。
特に狂気の演技が映えるフィンチが素晴らしいが、気の強い役で特に映えるダナウェイが、まるで自虐のようにエキセントリックな役を好演(最後の最後まで一切反省しないんだもんな)。ついでに言えば、唯一まともな見識を持ちつつ、やっぱり状況に流されていくホールデンも良し(手の早さも(笑))。
このキャラクタ性が功を奏し、ダナウェイおよびフィンチがオスカーを得ているが、フィンチは授賞式の時は既に故人で、授賞式には未亡人のエレナがオスカー像を受け取った。現時点では唯一の例である。
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