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[コメント] ドイツチェーンソー大量虐殺(1990/独)

国家について何かを知りたい知の探究者は、プラトンやスピノザを読むよりこれを観るべき。
ゴルゴ十三

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







いずれも普遍性の高い内容である種の人を熱狂させたドイツ三部作の記念すべき第1作め。自由市場に裏打ちされた現代の国民国家体制下にあって人間の自由と可能性そして価値をでたらめに描いた、牽強付会的英雄的大作。

東西ドイツ統合は、あたかも温度差を極めて異にする熱浴を混ぜた時のように瞬間的に分子間の相互情報量が最大になり、つまりは出鱈目な状態に陥ったドイツで、人間の自由権などあらゆる実体の潜在的な可能性があらゆる局面に於いて最大となった。このような状況下では旧東独人が人肉ソーセージになるほど、商品の固有価値をデタラメにするに至る。そしてラスト、轢断された女性から無意味に不必要にくり返される哲学的命題に人生の真実を視る:「なんでも可能な時に、良いも悪いもあるものか!」

一見チープにみえるカメラワークのなかにも、ドイツ前衛映画の正当な嫡死たる正面撮りの構図をみろ!!国家とは何ぞや?そして自由とは何ぞや?などと愚考を弄しがちな諸賢は、プラトンやスピノザを紐解く前にこれを観るべき!!!

(評価:★5)

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