[コメント] ボーイズ・ドント・クライ(1999/米)
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クロエ・セビニー。バーのカウンターで飲んでいるその横顔だけで惚れた。…いや、惚れた気持ちがよく分かった。夜のコンビニに出没する時のあの猫背、あの眼差し、そして何かにイラついてるような身振り手振り。こりゃ確かに田舎で息の詰まるような日常に生きていて出口を見つけられないでやさぐれてる青年なら、心惹かれずにおれない存在だわ。惚れた時は、その不意の訪問や表情の変容を見ているだけでも嬉しいという気持ち、よく分かる。(単に好みなのかも。)
傷つけられた身体は痛ましい。他人の視線と暴力によって傷つけられた体は、(こう言ってよければ)収容所の虜囚を連想させる。存在として、女としての強さも男としての強さも十分にはもち得ていない体。日常に鬱屈した青年らは、愚かしく浅ましくその弱点を暴いて責め立てる。誰が悪いと指弾できるならまだよいが、現実はひたすら愚かしいだけ。(本当のところ、自分にはあそこまで過剰に反応する彼らの気持ちはよく分からない。これが90年代の実話だというのもかなり意外なのだが。)ともかくもラナが芯のある娘でよかった。彼女もまた、田舎の息の詰まるような日常から脱け出したかったからこそ、まわりと異なる雰囲気をもつブランドン青年に惹かれたのだろう。正直、(我ながらバカみたいな思い入れようだが)彼女が死なないでよかったと思った。ブランドン青年もおそらくはそう望んだ。
二本立ての劇場で後ろの席に座っていた女子が、一本残して連れの男を置いて帰ってしまった。曰く、「当事者として思うところがあるからひとりで帰りたい」。「当事者」。どういうふうにその子が感じたのかちょっと気になった。(去られてしまった男は映画を観ながらこすい腑抜け笑いを連発し、女子の‘帰る’宣告に「え〜どうして〜?」と情けない応じかたしかできない野郎だったのであまり同情しない。)
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