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[コメント] 冬の河童(1993/日)

大人になろうとする時季を迎えた若者たちの静かな(静かすぎる)日常。

子供から大人へと変わっていかなくてはならない時季を迎えた女一人と男兄弟三人の、川縁での束の間の共同生活を静かに映し出していく。

静謐さの叙情とそこから浮き彫りになってくるだろうドラマを求めて失敗しているように思える映画。映画に充ちる雰囲気からは、同じく女性監督である河瀬直美の『萌の朱雀』が想起される。田村正穀が撮影を担当しているのも重なる(こちらは一部参加))が、この映画は雰囲気だけでそれ以上に迫ってくる何かが欠けているように思える。

周囲と通交のない、自然の風物に取り囲まれた領域での、近親相姦的な愛情の交錯と齟齬が静かに映し出されていく。だが、残念ながらこの映画の場合は、引き伸ばされた間(ま)の中に食い入っていくような眼差しの過剰さがなく、その間(ま)は観ていて退屈なだけの余剰として意識されてしまう。『萌の朱雀』と何が違うのだろうか。おそらくそれは、あちらが奈良吉野村という具体的な土地やそこの住人達への具体的な眼差しを拠り所にして、尚かつ方法的にそこへ(擬似的にせよ)根を張っていこうとする実践をともなっていたのに比して、こちらは作り手の思い入れだけですべてが虚構されてしまっているからではないだろうか。

(評価:★1)

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