[コメント] ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000/英=独=米=オランダ=デンマーク)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
しかも根幹として語られる話は、どうしようもないくらい不幸。
頼る人もなく、視力すら「失う」運命にある女が、同じ運命にある息子の視力回復のための手術代として貯めこんだおカネを盗まれ、「失い」そうになる。カネを奪った男に抗うと「俺を殺せ」と命じられる。彼女はスンナリ他人の命を奪い、カネをとりかえす。その代償として彼女は死刑となるわけで、いってみれば、自分の人生を「失う」ことで、息子の人生を「かちとる」ということだろうか。しかし、息子にその手術を受ける意思があるのかどうかは問われない。
救いのない泥沼にはまった彼女。すでに生きながらにして「失われた存在」の彼女は逃げようと思えば逃げられるのにそこから逃げ出さず、さらに救いの手はすべて拒絶し、まるで殉教者のように死に至る……のかと思いきや、死にたくないと暴れる。逃避先の歌に逃げ込む。どっちなんだ。
みずからが選んだ、「失うだけの物語」の顛末。息子の意思をまったく無視した、自己満足の世界。共感もできなければ、「感動」もできない。
語り口にはユーモアのかけらもない。ぬるすぎ、ダークすぎるテンポ。しかもドグマな映像が悲しいほど安っぽい。
この雰囲気は、そう、一昔前に流行った「コラボレーション」と同じだ。ある分野のプロが、別の分野のプロと一戦交える(ここではポップ音楽とあたらしい映画)。まあ、それはいいんだけれど、あまりにも融合の度合いが低すぎないか。
ミュージカルならもっとカリオグラフィをなんとかしてほしかった。とにかく、振り付けの規模が小さすぎるし、奥行きがなさすぎる。紙の上で考えたのではないかと勘繰りたくなるほど、あまりにも二次元的な振り付け(そこが狙いなのかもしれないが)。
ビヨークは歌っているだけで間が持つ。彼女が歌いだすと、心が動かされ、目にはじわじわと涙が浮かんでしまう。彼女の歌には歌の神様が宿っているから当然のことなのだ。だけど、「映画」全体を、彼女の神がかりな「うた」の力頼りきり、それに甘んじていいのか。ビヨークのあのチャラチャラ・フニャフニャした振り付けに至っては(キュートだけど)、全篇とおして見せられるとウンザリ。
ふん(鼻息)。
異議ありまくり。
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