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[コメント] リービング・ラスベガス(1995/米)

酒で死ぬというのの大部分は凍死か打撲傷だと思うのですが、これだったら…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 自らもアルコール依存症で、映画化決定後に自殺した作家ジョン=オブライエンの同名の自伝的小説の映画化作品。

 アルコール中毒を扱った映画はハリウッド史にはかなり多く、しかもその多くは主演男優賞、女優賞を輩出するというジンクスがある(精神病もそうだけど)。有名どころでは『失われた週末』(1945)、『酒とバラの日々』、変則的なら『愛しのシバよ帰れ』(1952)や『バージニア・ウルフなんかこわくない』(1966)なんかもそうだろう。本作もそのジンクス通り、見事ケイジは主演男優賞でオスカーを得ている。

 それでも通常ならば、酒を止めるまでの過程を描く事が多いのに対し、本作は全くベクトルが違い、酒が元で全てを失ったベンは、それこそ死ぬまで飲み続けるためにラスベガスへとやってきて、本当に死ぬまで飲んでしまう。いわばこれは自殺なのだが、それをあくまで暖かい視点で見守っているのが特徴と言える。

 恥ずかしながら私は下戸なのでほとんど酒を飲めない(ただし、飲んだらすぐに寝てしまうことが分かったので、寝る前には必ず一杯飲んでるんだけど…お陰で不眠症からは脱した)。だからこの心理は実はよく分からないのだが、果たしてそこまで酒を飲み続けることが出来るのだろうか?いや、それ以前にあんな風にまるで自然死のように死ぬような事が出来るとは思わないので(それ以前に凍死するか打撲死すると思う)、どうもリアリティが感じられないのが嫌だし、結局勝手を続けて回り中を不幸にし続ける男があんな風に静かに、しかもまるで祝福されたように死んでいくというのは、なんか釈然としない気持ちが残る。終わり方にもあんまりメリハリが無く、「これで終わり?」という感じ。

 ただ、やっぱりそれを超えて良いのはキャラクタ。それまでヒーロー然とした役ばかり見せられて、「絶対似合わない」とばかり思っていたケイジがここでは実に良いはまり具合を見せている。結局自分自身どう思ってるのか分からないけど、ケイジはこういう役の方が遙かに見栄えがするって。事実本作でのオスカー受賞のお陰で、そう言う深い役が多くなってきたのは嬉しいところだ。自分は最低だって顔しながら、ほんのちょっと嬉しいことがある時ににっこり笑う表情がとても良い。ここではやはり酒を飲むシーンにそれが現れているだろう。酒のお陰で全てを失い、しかも物語が進に従い、飲めば飲むほど回り中から蔑みの目で見られるのに、それでもグラスを持って、一杯目に口を付ける時のほっとしたような表情はやっぱり良いよ。一方のシューも見事にはまっている。娼婦役だからってふてぶてしさが無く、しなくても良い苦労を山ほど背負い込んでいるし、あんまり自己主張は出来ないんだが、いつまでも自分のためだけに王子様がやってくると信じ続ける、どこか少女めいたところのある女性。80年代に清純派として売り込んでいた残滓が残っている感じ。こう言うのにはシューはうってつけだな。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)Keita[*]

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