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[コメント] ペイ・フォワード 可能の王国(2000/米)

この映画にこそ“善意”がない
ミュージカラー★梨音令嬢

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







途中まで本当に良かった。ハントも、スペイシーもオスメント君も、素晴らしい演技で自然と物語にのめり込めた

思わず「ありえね〜」って思ってしまう話だが、私はこういうの大好きだ!キレイすぎるけど、もしかしたら有り得るかもしれない。ここまで広まらなくても、誰か1人の好意が伝染して、またその誰かが別の誰かに善い行いをしようという気持ちが生まれるかもしれない。着想の素晴らしさに脱帽した

しかし、このラストは何だ…?それまで夢中だったのに、一気に現実に引き戻された。ラストに対して色んな解釈があるだろう。私も考えた。様々な解釈が浮かんだ。その中には、あのラストでも納得できる解釈もあったが、どーにも騙されているような気がしてならない

殺してしまえば、そりゃ様々な解釈はできる。意味も深いように思える。人によっては安易に感動も与えられるだろう。でも、それがこの物語とどう関係するのか私には判らない。“ペイ・フォワード”を確かに広めて、彼は死んだ。家の周りには彼の死を悼む人で埋め尽くされた。少しハッピーエンドくさい感じにも思える

この監督は結局何が言いたかったんだ?この映画を観て、折角善い行いをしようと思っても、それをしようとした本人が死んだんでは気分も削がれてしまう。彼は神様か?「善い行いを広められたから、僕は安らかに死ねます」あんなハッピーエンドくさいラストでは、彼がもしやそう思って死んだのではという錯覚にも陥る。それでなくても「彼は死んだけど、善行が広まって良かったね」みたいな思いも生まれてしまう気がする

彼は神様ではない。人間だ。死ぬ時は痛かったろうし、絶対にまだ死にたくなかった筈だ。彼の死は美しくない。完璧な“悲劇”だ。物語が御伽話的なのは良い。だけど、彼まで御伽話にしてしまうつもりか?

私は彼がラストに死んだ事に、深いメッセージがあったとは考えない。それは彼の“死”までがあまりにも“美しく”描かれすぎているからだ。その上“子供”であったからだ。私には観る側に安易に感動を与える為の“手段”にしか思えなかった。そこから製作者側の“善意”は感じない

まぁ、それも解釈一つなのだが…。でも、高得点なのは“ペイ・フォワード”を信じたいからだ。それは必ず起こると…。それに、やはり出演者陣の演技な事も忘れ引き込ませる力。素晴らしいキャスティング。これに敬意を表して高得点に

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)アルシュ[*]

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