コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] アヴァロン(2001/日=ポーランド)

 どれほど予算を使っても、ポーランドで撮っても、やはり押井守作品。音響とCG技術の素晴らしさ(そして何故か安っぽさ)に酔えます。<ちょっとくだらない批評追加>
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 久々の押井作品!と言うことで、多大な期待を持っていた作品。だが、まるで劇中を思わされるようにネットの情報に飲み込まれてしまい、ストーリーの大部分は肝心な映画観るより先に分かってしまうと言う事態を生んでしまった。そう言う意味で映画そのものが本当に楽しめたのかどうか、かなりの疑問。押井守は映画でのみ触れあうことが出来れば良いと思いつつ、情報を漁る私の浅ましさが仇になった。

 ストーリー的には押井守の映画を貫くテーマ、「現実と虚構」の対立が遺憾なく発揮されており、複雑且つ難解なストーリーとデジタル映像による、暗い雰囲気と相まって、面白い作品に仕上がっている。

 それでは、この作品の最大の見どころは何か?少なくとも私的には食事シーンだった。(同好の士にこのことを言ったら、反応に困っていたようだが…)あの名前のないバセット・ハウンドががつがつ食べるイヌメシにもちゃんと心配りがされ、(特に友人からは「気持ち悪い」と称された)スタンナの口元。よく観ると分かるが、これらはことごとくきちんと色づけがされている。何でもここだけは映像処理の段階で抜いて、後で貼り付け直したのだとか。CG制作者にとっては悪夢のような作業だったらしい。

 元々押井守監督は(特にチープな)食に対し、異様なこだわりを見せる。フル・デジタルだろうが、ポーランドだろうが、どうだって良い。そのこだわりが見たかった。その意味では満足いった。

<付記>  押井守は最近ディジタル撮影について?と言うインタヴューに答えて言っている。「これからのディジタル撮影とは、“何が出来るか”を問われるのではなく、“どう不自由を与えていくか”にこそある」と。ディジタル撮影の旗手と言われる監督の言葉にしては不自然のように思えるかも知れないが、まさに彼が作ろうとしている映画は全て“どう撮影場の不自然さを演出するか”にかかっているのであり、その姿勢が映像上の傑作作品を生み出してきた。

 実際、今はCGで大概のことは出来るようになってきた。ただ、無批判にそれを受け入れることは、映画に対する冒涜に他ならないことを忘れてはならない。何でも出来ると言うことは、結局今まで苦労に苦労を重ねてきた撮影技術を全て無視することにも繋がっているのだから。それに本当の意味で「何でも出来る」と自惚れていたなら、映画は野放図に放っておかれることになる。それでどれ程くだらなくなるか。その恐ろしさも認識すべきだ。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (8 人)荒馬大介[*] ミュージカラー★梨音令嬢[*] いくけん[*] ガブリエルアン・カットグラ[*] ハム[*] ina[*] ペペロンチーノ[*] mal

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。