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[コメント] スピオーネ(1928/独)

序盤と終盤の演出は冴えまくっている。この調子で全編通してほしいのだが、中盤は淡々と物語を追うのが当時の常識だったのだろうか(オーソン・ウェルズも同様だ)。大半はありがちな物語を追いかけるばかり。ハラキリは笑えるが。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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冒頭が素晴らしい。仰角で捉えられたバイク飛ばしながら笑うライダー、オープンカー運転手の背後からの射殺、重役デスクの前で窓からの銃弾に倒れる男、等のクライマックス集が数珠つなぎに連射される。

場所はドイツ。銀行(当然にユダヤ系なのだろう)頭取で間諜団のハギー(ルドルフ・クライン・ロッゲ)は日本との秘密契約について聞き出そうとして、阿片吸っている写真で強請る。日本大使館での条約締結は日本にとって最も重要と云われている。条約文書は封筒三つに入れられて東京へ届けよと松本大使(ループ・ピック)。ハギーは二つも入手するがどちらも偽物。それで三つ目をゲットしてこれは本物だろうと開けると偽物。ハギ―の魔力でどうとかなったらしく少年探偵団系。

ハギ―の部下のソニア(ゲルダ・マウルス)に文書盗まれて松本の切腹。仏像に向かって袴姿で手を合わせている。そう云えば『新しき土』(37)の日本文化論は仏教とともに語られていた。ドイツでは日本と云えば仏教であり、神道はなぜか考慮されないらしい。短刀を和紙で巻いて切腹しているが仰角のバストショットで腹は映らない。ラングには『ハラキリ』という作品もある(未見)。あちらはどんな具合なんだろう。

敵国はソ連。「この条約が悪の手(ソ連)に渡ると東洋で戦争が始まる」と密偵326号(ヴィリー・フリッチ)。すると件の条約は何にあたるのだろう。

密偵326号とソニア(ゲルダ・マウルス)、敵スパイ同士の色仕掛けの仕掛け合い、ソニアの父は皇帝ツアーの秘密警察の犠牲者で、326号を恨んでいるが、惚れたが負けよの世界が展開され、これが中盤の大部分を占める。。女は男の写真にキスし男はバーでボトル空にするカットバック、みたいな平凡な展開。俳優も平凡でボギーとバコールという訳にはいかない。

それでも終盤は盛り上がる。国境越えの列車を切り離し、後から来た汽車に突っ込まれるショットとか。ココナッツ売りがクルマに爆弾投げつける件とか。「もうすぐ死後の世界が見られるぞ、ソニア」。最後は舞台で自殺するハギ―に観客が拍手喝采のシニカル。

(評価:★3)

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