[コメント] 上を向いて歩こう(1962/日)
明るい青春映画と思って観ると、これが全ての意味で「怨恨を乗り越えてゆく物語」であることに驚かされる。そして「流血」の物語でもある。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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暗い運命を背負う浜田が世を呪い、高橋が恵まれた環境からおのれが弾き出されたことを恨んでいるのはもちろん、みなを結び付け、励ましてゆく役回りの吉永までも、小児麻痺の義妹に両親の愛が独占されたことにジェラシーを隠さなかったことを告白する。そして坂本も、新しいトラックを盗んで壊した浜田に怒りを爆発させるのだ。
クライマックス、血こそ流れないものの浜田と坂本の喧嘩ではペンキが、高橋と労働者の喧嘩ではコールタールが、それぞれ流血の役割を果たす。皆、心の中では血を流し合っているのだ。それが本物の血ではないゆえに吉永の「みんな哀しいだけなのに、なぜ武器を向け合うのよ」という言葉で喧嘩はおさまり、みなそれぞれの仕事場に帰ってゆくのだが、舛田監督はここで本当の血を描きたかったのだろう。この映画が、日本社会の底辺から上を見上げ、涙をこぼすこともできず、向ける方向も判らない怨恨の叫びを上げる者たちを描く映画だからだ。
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