[コメント] 現金に体を張れ(1956/米)
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完全犯罪を目指したピカレスク・ロマン作。こう言った泥棒をモティーフとした作品は二つの方向性があると思う。
一つにはこの手の作品はキャラクタ性を立たせるか、演出を派手にすることに目が行ってしまうパターンで、ハリウッド製のほとんどはこちら。謎めいたストーリーや意外性などを盛り込みやすいため、エンターテインメントとしては優れているが、個人プレーの方に重点が置かれるので、肝心な設定のプロットや、計画の破たんに対するフォローが全然できていない作品が多い。それこそいくらでも挙げられるけど、古くは『おしゃれ泥棒』(1966)がそうだし、アニメだが『ルパン三世』シリーズなんかはまさにこれに当たるはず)。
もう一方はベクトルが別で、実行に至る過程を丁寧に描き、いざ実行に当たり予定外の出来事にどう対処するかを描くパターン。計画から実行、失敗に至るまでを緻密に描くことになるが、この場合は話のかなりの部分が打ち合わせになってしまうため、コントロールが難しい特徴あり。近年では『スコア』(2001)なんかがそうだろう。
この二つのパターンは相対するものではないので、ほとんどの場合はそのどちらも含ませようとするものだが(『エントラップメント』(1999)なんかはそのどちらも含む作品としてとらえられる)、あくまでプロットに重きを置いた後者の代表作と言えるのが本作と言えるだろう。
本作はストイックなまでに演出の派手さを排して会話を重要視しているのだが、その打ち合わせ自体にドラマ性を持たせているため、それだけでも緊張感が途切れない。見事な時間把握と会話のテンポの良さ、それにどんな人間にも裏があると言う事実をここで叩き込み、実行に至っては思わぬハプニングがどんどん起こってくる。なるほど打ち合わせがしっかりしているからこそ、こう言うハプニングも映えるのだ。ラストの虚しさの雰囲気も含め、キューブリックの巧さに改めて感心させられる。
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