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[コメント] 新しき土(1937/日=独)

ファンク監督が見る山はやっぱり険しい。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 山岳映画の巨匠ファンクが自分から申し出て監督した、戦前に作られた日独合作映画(ドイツ題『侍の娘』)。話自体は日本のエキゾチックな文化が強調されすぎているが、ナチスの評判も良く、日本側も、世界に誇る作品が出来たと言うことで、受けは良かったようだ。

 だけど、やっぱり観ていて違和感だらけ。確かにファンクらしい峨々たる山の風景や、日本の文化などの描写はあるものの、“日本的なもの”が根本的に間違ったところを指しているのでは?という思いが終始つきまとう。やっぱりこの時代であれ、日本を描く場合、その風景を描くべきだと思うのだが、この作品の場合、自然というのが日本庭園と岩だらけの山ばかり。流石にこれを持ってきて「日本です」と言われるとねえ。ファンク監督が撮るとなんでも同じ山になってしまうみたい。

 男に振られたからと言って死を選ぶ女性の姿も違和感あり。殊に女性の死ってのはこういう描かれ方をして欲しくないところ。婚約者に見捨てられたら潔く自殺するという“武士道精神”を女性に見ているため、この潔さこそが受けた要素なんだろうとは思う。ただ、ここでの大和と光子の関係って、実はヨーロッパ(と言うよりドイツ)と日本の関係なんじゃなかろうか?ちょっと放っておかれると簡単に死を選ぶ日本人に手をさしのべるドイツ。って感じで。そう考えてしまうと、なんか気持ちが萎える。

 ただ、キャラに関しては文句なしなんだけど。やっぱり国際協力ってことで、日本側は最高の役者を用意してるし、それぞれ熱演してるのが分かるし。その点だけは評価出来る。

(評価:★2)

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