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[コメント] フランケンシュタイン対地底怪獣(1965/日)

異形ゆえに何一つ行動が理解されないフランケンシュタインが何とも不憫に思えてくる。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ……だってそうじゃないですか。そもそも彼が研究所で暴れて逃走するという火種を作ったのは、勝手に入ってきた取材班が興奮させるような材料を持ち込んだからに他なりません。それでも李子(水野久美)のところに寄り、去っていくという彼の行動は切ない。それにしてもこの場面、団地の中にひょっこり現れるフランケンシュタインというビジュアルはなかなか凄い。その後はフランケンの逃亡劇。最大の研究材料でありかつ彼の良心を信じているボーエン博士と李子らの科学者達、そして彼を一つの「怪物」として認識する警察や自衛隊の人達。双方がフランケンを追いかけているが、この逃亡劇は完全にフランケンと博士達の方が不利である。

 「怪物」扱いされている「彼」は何をしてもそれ相応の解釈しかされない。琵琶湖に現れた際に遊覧船をよけようと向きを変えるのはいいが、「襲われた」としか思われないだろうし、腹が減って何か動物を捕らえようとすれば「残酷」扱いだ。鳥を捕らえようと大木を放り投げれば小屋を潰す。猪を捕まえようと落とし穴を掘ったら戦車がハマる。全ての行動がまるで良い方に転ばず、どんどん状況を悪くしていってしまう。無論、フランケンにそんなことなど分かるはずが無いし、第一悪気など無い。だからこそ彼は不憫なのだ。

 ではあるけれど……結局のところ彼は「怪物」だった。しかし「怪獣」ではなかったはずだ。李子達を守るためにバラゴンと戦い、勝利を収めたのだ。単なる「生物の持つ闘争本能」からではない。間違いなくそこにはフランケン自身の想いがあったと思うのだが、その後彼は生死不明となってしまうので分からずじまい。最後が「和解」という結論では生温いし、フランケンが人類の手によって駆逐されるというのでは彼が登場した意味が無い。結局最後はああなった。この手の人造人間ネタは、結論を出すのが難しいようである。

 ちなみに大ダコが出てくるという海外版のラストだが、どうもあのシーンは撮影終了後に追加で撮ったものだという。つまりラストシーンのリテイクとして大ダコをこしらえ、当初は海外向けとは考えていなかった、というのが真相らしいが……果たして?

(評価:★4)

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