[コメント] タイトロープ(1984/米)
夜がメインの暗いトーンの画面や、そんな物語を象徴するかのように夜景の空撮で始まり、終わるところ。加えてクライマックスのアクションに至るまで驚くほど『ダーティハリー4』にそっくりなこの映画と前者との明らかな違いとして…。
ひとつにはそれまでのイーストウッド映画の象徴とも言うべきガンファイトが、この映画には見受けられないこと。そしてもうひとつには、この映画における「俳優」イーストウッドが、同じような警官という設定でありながら、内面的な部分にまで踏み込まれた脚本のせいもあってか、非常に細かく、また意欲的な芝居を見せていることの2点を挙げることができる。
それが意図するところはただひとつ、「警官を演じるイーストウッド=『ダーティハリー』」というイメージからの脱却だけであり、その回答を形として表したものがこの映画であるといえる(それまでにも様々な役柄に挑戦し、当たり役のイメージからの脱却を試みた彼だったが、肝心の警官という役柄においては、その固定的なイメージからの脱却というものを図れていなかった。そんな彼にようやく訪れたのがこの映画の企画だったのだろう)。
実際この映画における彼の繊細かつ意欲的な芝居は素晴らしいものがあるし(特に顔芝居がいい)、それに引き込まれながらドラマにも引き込まれていくのは決して悪い心地ではない。その意味でこの挑戦は、少なくとも私は一定の成功を収めたと思っている。
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ちなみにこの映画、監督のクレジット自体は脚本を担当したリチャード・タグルである。しかし実際のところは、初演出で早々に行き詰った彼の仕事をイーストウッドが引き継いで完成させ、名義だけはタグルのままにしておいたというのが真相であるらしい。
どこかで聞いた話だが、参考までに。
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