私がこの春日部市との県境に越して来て1年半になる。 他県に居住する方々には、たかがアニメかも知れないが、実はアノ事件は実際に起こった実話のアニメ化だったのである。

私のデスクの上には新旧の1号ライダーのフィギアが誇らしげに並び、2歳になる息子には毎週『仮面ライダー』と『ウルトラマン』を強制的に見させ続けた結果、今ではハヤタ隊員と本郷猛が彼のヒーローになった。

私はけっしてオタクではない。だが、ラムネ菓子のオマケにこれらのフィギアが付いたものをコンビニで発見した時の驚きは得体の知れぬ喜びへと変わっていった。

そして、息子へ儀式のように、かつての自分の懐かしい知識を伝授していったのである。

しかし、驚くべき事は、それが我が家だけの秘めたる儀式ではなく、春日部・越谷といった広い地域の家庭で多数行われていたという事だ。その証拠に路地で遊ぶ子供たちのボス格は本郷猛の役で、ＮＯ,2は一文字隼人を演じている。言葉を上手く喋れない幼児は可哀想にショッカーの戦闘員役だ。　「イーッ！」

東武動物公園で開催される「仮面ライダーショー」にはお約束のようにお父さん世代の1号ライダーやＶ３が出演する。だから私は行列に並ぶ、息子の為ではなく自分の為にだ。

このアニメでは大人たちは無事に元通りに家に帰った事になっている。しかし、地元では未だに帰って来ない何人かの噂が後を絶たない。いや、解放された私たちでさえ、このような症状が治らない。

ＰＳ；　過去を振り返り、郷愁に浸ったっていいじゃないか。愛する人間の人生を背負い込む事もなく、ただ「子供」として自由奔放に生きる事が許された唯一のアノ頃。あの頃に戻ってみたい。

だって、明日はまた会社に行かなければならない。責任を果たしに行かなければならないのだから・・・