[コメント] マレーナ(2000/米=伊)
映画を見終った人むけのレビューです。
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見ている間、この映画はどのようなスタンスで見れば良いのかと 迷っていた。下ネタ炸裂だったので、コメディと思えばいいのかと 考えたが、クストリッツアのように突き抜けた笑いも、ワイルダーの ように緻密に計算された笑いも存在しなく、ただただ、マレーナのお色気に男は「イイケツしてんなぁ。やりてぇ」と呟き、女は眉をひそめ 「あの淫売」と噂ばかりしていることに、「暇な人たちもいるもんだなぁ。戦争中でもこんなに呑気な時代だったのか…」と少々辟易しながらも安易に考えていた。
しかし、である。あのラスト間際のマレーナのリンチ。もう、怒髪天もので ある。わざわざ大きな胸を露にして、女たちに髪をバッサバッサと 切られていく。女たちの満足そうな顔。そして男たちは困った顔をしながら、見て見ぬふりをしている。少年だけが、真実を知ってるといわんばかりに同情の表情のアップになっているが、こんなことで騙されてはいけません。何故なら、この映画はトルナトーレ自身が脚本を書いているからだ。
つまりこの映画は、マレーナをスケープゴートするために、 物語が展開されていたのである。モノにできなかった女(だからこそ、 生涯で一番愛した女)を、ああやって汚すことがこの監督の本性ならば 「アンタ、人なんて全然愛してないよ。それ、アンタの妄想。 次から次へと女変えるタイプでしょ?」と言ってやりたくなった。 (結局、アイドル=偶像を陵辱することが彼の最大の妄想だった) しかも、自分の分身である少年は、汚れのないセンズリ小僧にすることで、 見る者に愛すべきキャラと受けとるようにしてるトコが図々しい。
私はフェミニストでもビッチ嫌いでもなく、むしろ娼婦好きなので、 怒りがふつふつと沸いているのかもしれない。娼婦とは、強さと哀しさを あわせもつキャラで、こんなに魅力的な女性を、虫ケラのように(あー。 そういえば冒頭でアリを殺してましたね。あれはマレーナのメタファー だったのでしょうか?)扱ったことが許せないのかもしれません。 もちろん、マレーナ娼婦は、全然魅力の欠片もありませんでしたが。
余談ですが、私も、大幅に世間とズレている人間なので、 自分と親しくない人たちが、裏でコソコソと噂話をしているという事実を 何度となく見聞したことはあります。それでも、今ある自分でいられるのは メリットやデメリットなんて関係なく、間違っていれば諭してくれる 友人や、困っていれば自分を必要としてくれる友人の存在が、 大きいのだと思っています。仮にマレーナのように、噂ばかり先行して孤立していったら、死にたくなるなぁ。でもマレーナも自分から声もかけず、お高くとまっていたから、孤立したのかもしれないけど、信頼できる人が 誰も登場しないというのは、かなりイタかった。
しかしそんなマレーナでも、最後の最後で「こんにちは」と町の人に声をかけ、受け入れられたことは救いのように見えました。そんなに世の中、嫌な人ばかりじゃないんじゃないかなぁ〜というのが、持論なので。
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