[コメント] ココニイルコト(2001/日)
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東京と大阪。どちらの街にも利点や欠点はあると思う。この作品の主テーマでは無いけれど東京の持つ時間の流れの早さ、ある種の冷たさと、大阪の持つ飾らなさ、優しさ、みたいなものをサラリと紡ぎ出せていたのがいい。日本はそれぞれの都市(街)で様々な顔(空気)があるんだと今さら気付いて、ちょっと嬉しくなった。
ヒロインの真中は女優にしてはいつも表情に乏しく能面のようなのだが、本作の不器用で素直になれない袋小路に入り込んだ役柄は、そんなに違和感は無かった。 泣いたり怒ったりの不安定さではなく、感情の吐露の下手な平板な雰囲気が生む現代的な都会の女性という印象がしっくり来て好演。
彼女の心に温度を与える同僚を演じた堺は表情が、にやけ過ぎて不自然(小日向文世に共通)すぎる上に、声のトーンが尋常じゃないハイで、ジャンキーとは言わないまでも真中を元気づける以上に無理を感じる。彼の演技力の問題なのか、持病を抱え、両親を失っているという複雑な設定を考慮して作り上げた演技なのかは謎。彼がラストに亡くなることで、妙にテンションが高かったこともラストで帳消しにはなる。が、中盤まで不協和音なのは事実。(ただ彼の死の描き方は昨今の純愛映画と比べると自然で良い)。
サポーティングの真中の同僚:黒坂や、おもちゃ会社社長演じた島木が好演。 特に島木は存在感もあり、もしハリウッドだったらポール・ソルビーノのようにマフィアやダイナーの店主役などで引く手あまただったと思う。芸人より役者に向いていると思った。
関西弁の上手い、下手はさておき、時間軸のいい加減さは気にはなった。昼に会社を抜けて夜になって居酒屋行ってプラネタリウムに居たりのワープ状態や、ポンポンと会社を抜けられる現実感の無さ、競艇はともかくプラネタリウムという思春期前期的なモチーフ自体も安易で微妙ではあった。加えて真中の考えるCM案件が全く、おもちゃ会社のイメージに合っていずデパート広告みたいなのも説得力が薄く微妙。…。けれど、揺れることなく最後まで、一人の人間(真中)の人生の岐路に立った時の居場所探しを一貫して描けていたので評価したい。
まぁ、ようするに観賞者が、どこまで共鳴出来るかが大きいわけで人生模索状態の自分としてはモヤモヤ愚図ついているヒロインに深~くシンパシーを覚えずには居られなかった。
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