[コメント] 妻は告白する(1961/日)
擦り寄ってくる若尾文子の肌は白くぬめっている。滑らかに滑る腕が巻きついてくる。
その心地良さと裏腹に、ひとたび逆の方向に離れようとすれば、鱗は逆立ち、男の肌に食い込む。
柔らかな頬をすり寄せ、男の耳元に誘惑の言葉を絡ませる。しかし唇から垣間見えるその舌先は細長くふたつに裂かれている。
まるで蛇のような爬虫類。だが、冷徹なガラス玉のような蛇の瞳とは正反対の瞳を持つ。
若尾文子という生物は喜び・哀しみ・憎悪・恐れそして狂気をその瞳で露わにする。顔のわずかなパーツで露わにする。さらにそれで足りないとすれば、顔の角度でその意思を露わにする。
貞淑と奔放。隷属と支配。哀願と激昂。さまざまな顔を持つ生物「若尾文子」
これが「おんな」の正体なら恐ろしい。そんな正体を知らずに庇護しようなどと考えた馬鹿な若造は絡め取られ殺される。
だが、実際にこの生物に遭遇したならば、罠とは分かっていてもその白き肌に溺れるだろう。その濡れた瞳で身動き出来ぬようにさせられ、ゆっくりと殺されていく。
張り巡らされた粘着質の糸から逃れようとするのは、単に肉体的な反射に過ぎない。心は破滅的な死を望んでいるのだ。そうさせられるのだ。
あうる意味、究極のSM映画を見せられた気がする。
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