[コメント] 昭和枯れすすき(1975/日)
兄が刑事で妹は泥棒、ってのは本来コントの設定なんだろう。これを大真面目に演るものだから奇妙な味わいが醸し出されている。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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推理ものとしては二流。全くダメなのは小走りな収束で、主題歌(「♪この町も追われた」)との折り合いをつけるためだけの急展開が余りにも酷い。あれしきのことで公務員辞めないでしょ高橋秀樹、貧乏なんだし、池波志乃がいるのに。原作は結城昌治「ヤクザな妹」とあり、歌謡曲とは関係なかったんだろう、その継ぎ接ぎがボロい。まさか新藤兼人がこんなやっつけ仕事するとも思われず、歌謡映画の体裁整えるための制作サイドの改編と想像される。気の毒なのは添え物の池波。
しかし中盤は所々面白い。兄妹添い寝の件など70年代の妖気漂い、そんな家庭の形もあるのかと思わせる。凄いのは高橋が妹の秋吉久美子に手錠をかけ、留置所にぶち込む件。家庭に法律が闖入するに当たって生じるであろう箆棒な倒錯感がある。対幻想と共同幻想は逆立すると吉本隆明が云っていたのが、これ観てはじめて判ったような気がした。大袈裟ですが。家庭と法は同一線上に並べると何て奇っ怪に映ることか。
仕方なく女やっています、という秋吉の幼いダルな表現はいつもながら唯一無二のリアルがある。町並みに「ルノアール」の看板が見つかった、こんな昔からあるのだ。子供の頃聴いてトラウマになった主題歌はいま聴くとますます侘しい。
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