[コメント] 夏至(2000/仏=ベトナム)
艶々した黒い髪、毛穴まで見える皮膚感、光る鶏の皮やカマキリ、抉られるフルーツに散る花、無数の円を描く水面、翡翠色の大雨、その瑞々しい場面のすべてが「なまめかしい」。wet,wet,wet.
漢語の「官能的」より和語の「なまめかしい」。「ゾクゾク」というより、スポンジが水をたっぷり含んだような「ジワリ」という湿った官能とでも言おうか。mirror氏が『シクロ』のレビューで、「この監督は変態」と仰ってたが、まさにその通りだと思う。
物語も、人物に言葉として多くを語らせるのではなく、冒頭の極楽昼寝気分の「場面」にゆっくり染み入った、それぞれの登場人物の「歴史」が、自然とジワリと染み出すような、不思議な余韻を持つ、説得力のあるものになっている。ハリウッド映画に見られるような作為的で劇画的な捏造された「愛」ではなく、実際の生活の中でのちゃんと呼吸してる「愛」、そういう、ささやかでとりとめがないけれど、決して見落とすことのできない大切な物語。
強い印象は残さないかもしれないが、私の心のスポンジもこの映画の水分を十分吸ったようで、後からジワリと余韻が心から染み出してきた。
個人的には、この映画のアクセントにもなってる、あの兄妹の朝の風景が、もう抱き締めたくなるくらい大好き。日本だったら、カフェミュージックとか言いつつお決まりのボサノバとかかかりそうだけど、ルー・リードってのが、もうタマラン!秋に公開の話題作『夜になるまえに』でも使われているようなので、ヴェルベット・アンダーグラウンド、またまたリバイバルヒットになるかもしれませんな。
鑑賞後、雑貨屋直行、部屋の模様替えしたくなった。とりあえずサントラは買い。目を閉じ、気分だけでも…極楽ゥ〜
[8.8.01]
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