[コメント] 反則王(2000/韓国)
よく言えば起伏を抑えて一歩引いた、悪く言えば素人くさい画面。
にも関わらず話は破天荒。ソン・ガンホ演じるサラリーマンが、大した練習もせずにいきなりリングに上がってしまう。
監督キム・ジウンの前作『クワイエット・ファミリー』は観ていないので何とも言えないが、この画面を監督が意図したものだとすれば、そこには、
「淡々と撮ることで画面世界に現実味を加える」
と言う効果を狙ったものと思われる。
しかし、いかんせんプロレスのシーン及び脚本にあまりに現実味が無い為に結果としては非常に消化不良な作品になってしまっている。
そもそも主人公がリングに上がる必然性が無いのである。彼はマスクを被ってリングに上がる。ならば最初からジムにいたレスラーコンビ2人のうちのどちらかがマスクを被ればいいわけだ。何も突然飛び込みで来たような格闘技の経験も全く無い素人を使う必要は無い。
さらに肝心のプロレスのシーンがグダグダ過ぎる。そうすることによってジムの窮状を表したかったのかもしれないが、それにしても酷すぎる。身体つきはともかく、あまりにプロレスになっていない。例えばプロ野球を舞台にした映画で、どんなに3流のチームだとしてもピッチャーが全員ホームベースまでノーバウンドで球を投げることが出来ないという設定の作品に共感できるだろうか?
誤解の無いように言いたいが、脚本に現実味が無い事が悪いのではない。このような撮り方をしたから現実味が無い事が余計に際立ってしまったのだ。これより荒唐無稽の話など例を挙げるまでも無く星の数ほどもある。
監督はきっとプロレスにさほど興味が無いのだろう。「これぐらいでいいや」と思ったのかもしれない。ただ、このような撮り方をした以上画面上での事物に少しでも嘘があった場合、観客は途端に素に戻ってしまう。
より娯楽に徹した作風に仕上げれば、この脚本は面白くなったと思う。それだけに残念だ。
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テレ東の吹き替え版では、なんとジムのコーチ役を橋本真也が演っていた。お世辞にも上手いとは言えないが、それなりに味が出ていたのが不思議。彼はこの作品を、そしてプロレスシーンをどのような思いで見たんだろう?
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