[コメント] メメント(2000/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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逆さ見せによる謎解きゲームは本題ではない。記憶交錯体験によって、後でネタを明かした時の為の「説得力」を手に入れつつ進行して、そしてラストで今までの全てを完全な「前フリ」として、ラストの結論に使う。そういう意味で、あの有名作家の小説二つを勝手にくっつけた某名作邦画と同じ構造。ラストですぐに思い出してしまった。
結局この映画の本質は(ウリは別にして)「世界の主観性」とか何とかいう皆さんよーくご存知の事を訴えるドラマ。目的は主題自体にはなく、それをより「体感」させること。より脳みそに響かせるこ事。より揺さぶる事。だから前フリの記憶ゲームで如何に客を本気にさせるか、如何に前フリだという事を気付かせないか、そして前フリから結論へと至る持っていき方、動かし方が大事。
逆さ見せは確かに面白いが、少し見ればサスペンス的な謎解要素は意外と少ないことがわかる。前後のシーンを必死でつなぎ合わせて、犯人が誰か、どの場面の誰が正しくて誰が嘘つきかといった事を当てるのはあまり問題ではなく、何か決定的なオチ、大きな展開の動きが起きるまで「待つ」以外にどうしようもない事に気付いてしまう。早い話、「今見てるものは曖昧ですよ」って事が言いたいんだな、ってわかってしまう。だからさすがに二時間も記憶力勝負を続ける気は起きない。結論を待ってしまう。
そしてオチ、その結論というのは既に知られているネタだから、むしろ「どうやって」客に「感じさせるか」が重要だったはずなんだが、この映画はその部分がすっぽり抜け落ちている。唐突に言葉で理屈を説明して終わりだった。そこが残念。肝心な所で決定的に詰めが甘い。
この作品で評価したいのは、斬新そうであまり斬新でない設定ではなく、そんないかにもな一発ネタをこれだけ真剣に作った事。前述のように脚本の肝心な所が甘いが、部分的には凄くしっかりしてるし、テンポが良い。俳優も何気にガイ・ピアースが良いし、奇をてらった感があまりなく堂々としたもの。まともな演出が奇抜な編集を引き立てていたように思う。さすがに一時間もすると疲れてきたが、途中までは心地よく見れた。つまり「本格的に」撮った所が偉い。正直目も当てられないような「狙ってるぜぇ」感が丸出しの雰囲気を予想していたので、驚いた。
むしろ俺としては「誰かこういうのやってくれないかなぁ〜」という類の話を、(実際は前フリでしかなかったのは残念ではあるが)ついに大真面目にやってくれたか、「待ってたよ」という気持ちだったので、結果的に大した作品にはなってないとは思いつつ、感謝の気持ちを込めて4点です。
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