批判的だと防衛庁は一切協力せず、米軍施設で撮影されたそうな。当時はまだ、三矢研究に始まるシビリアンコントロール違反への警戒がこのようにエンタメとして成立していたのだった。フジテレビが特集してるし。メジャーがやたら体制寄りな昨今ではもうこのような娯楽作は成立するとは思われず、カドカワの蛮勇が懐かしい。このプロデューサーに映画のセンスがあったとは思われないが、蛮勇は買いたい。こんなことしてたから体制に別件で切られたんじゃないのか。

これで殺せとばかりに夏八木勲が高倉健に西部劇よろしく斧をトスするシーンは眼を疑った。その前後に夏八木の取る行動との解離が甚だしい。そして、ごっつあんとばかりに斧を敵の脳天に振り下ろし続ける高倉に、身についてしまった自衛隊の習性を憐れむニュアンスが決定的に欠落している。薬師丸に指摘されてアワワとなる訳だが、これでは高倉がただの猟奇的なボンクラだ。相手は素人だよ、プロなら峰打ちにするでしょ、普通。物語を進める都合で魂を抜かれている。

そもそも、冒頭で匂わせた通り、高倉を全員殺害した殺人鬼で通したほうが絶対面白かったろう。そこからどう展開させるかは実力次第ということでお願いしたい。途中でなんだいつもの正当防衛かと客を萎えさせてはいけないんじゃないの、高田先生。