山崎努のパンチの速さ、身体の切れをシャープに撮って見事。 他の出演者も冗長とは無縁の演技。これも行定監督の手腕か？ 脚本に無駄が無いのも近年まれにみる。 ここに描かれている世界が嘘なのか、それとも真実なのか、そんなことは どうでもいい。自分にとって本当に思えるならそれで良いのである。

劇中の、桜井のお父さんが「中国や朝鮮の人間は血が汚い」と教えたというエピソードは本当だと思う。自分の世代の心の底に潜む言われなき差別意識は、そういう 「ちゃんころ」とか「とうじん」とか小さい頃聞いた「言葉」で覚えている。 桜井のお父さんは、本当にバカで、どうしようもないけど、何年か前まではそういう人は厳然としていたのだと思う。

この映画では、差別を受けてきた「在日」の人の問題を、青春のまっただ中にいる若者が持っている一つの問題として捉えただけのように思えた。

シェイクスピアの言葉を引用したのは、少し安っぽいと感じた。 名前は世界で一番短い「呪」であるのだから。