[コメント] リリイ・シュシュのすべて(2001/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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岩井俊二という人は怖いことをする人だなあと思った。「メイキング・オブ『リリィ・シュシュのすべて』」を少しだけみて知ったのだが、これが監督の作ったネット上のあるサイトから立ち上げた企画であるということ。それは、リリィ・シュシュという架空の歌手のファンサイトに、監督自身がフィリア、そして他の投稿者になりすましてBBSに書き込んでいき、そこにそれを見た実際の人々(観劇者?訪問者?)もカキコミに参加していくというもの。つまり架空のメディア(未完成の映画脚本、存在しない歌手のファンサイト)に実際の人間(リアル)が紛れていくということ。 この人、マジで現実と非現実を混ぜようとしてる。こういうインターネットが広まると頭賢い人(←もちろん悪い意味で)は色々やりたくなるんだろうけど、こんなやばそうなことほんとにやっちゃうんかよ。(リリィファンサイトのカキコミに、訳も分からず参加してハマッて行った人達のちょっと興奮気味に話す顔が怖かったよーー) ていうか宣伝コピーの「リアル」っていうのはそう言う意味ですか?
本編の感想。 まず、岩井映画を観たのがこれが最初じゃなくて良かった。これを一番初めにみてたらますます邦画嫌いがひどくなってた。淡々とキーボードの音&カキコミ。がまんしてみてると今度は旅行のビデオカメラの映像。でも結構これが苦にならない。なんかの麻痺か?むしろこっちの映像のが面白かった。たぶん、このビデオに映る映像が一番ハッピーな風景だからだろう。とにかく猿のように神出鬼没な大沢たかお&沖縄の風景になんかとけ込んでない市川実和子。(このころ彼女って新鋭女優だったっけ?)彼らが色んな意味で盛り上げる。眩しくて中学生らしい主人公達の姿。それから一転して、ある田舎の中学校の地獄絵図がなんとも爽やかな映像で映し出される。この傍観したような距離感のアングルっていうのはたしかにリアルかもしれない。
私的にリアルだったもの。蒼井優が踏みつぶしたお札。 あたしの様な貧乏性の人間は、一万円札が踏みつぶされるところなんか見せられると、おもわず「あーーーもったいないぃ!」ってなるんだけど、そのボロボロなったお札とドブ川に入っていった津田(蒼井)を見ると、彼女の受けた傷の痛みが想像できた。14歳であんな仕打ちを受けるなんて、どんなけ苦しいか。
私的にリアルでなかったもの。久野さんと担任の女性教諭。 この二人の存在はありえない。まず久野さんは、あんなことをされて次の日平気で登校できるなんて思えない。レイプされるショックっていうのは、どんなものなのか。性的に辱めを受けたことのない人には想像できない辛さだろう。女性なら少なからず、そしてその大小に関わらず、性的嫌がらせや暴行を受けたことがあると思う。私も久野や津田と同じ中学生だった頃、近所の上級生や診察中に医師からセクハラを受けたことがありショックだった。怖いのと恥ずかしいのとで誰にも言えず苦しかった。レイプはそれ以上のショックと苦しみだと思う。彼女のあの強さはリアルとはとうていよべない。 それと担任の先生。自分の受け持つクラスで、優等生の始めたいじめと登校拒否と教室内の殺傷事件といきなり坊主になった女子生徒と自殺者が出れば、大抵の教師は胃潰瘍か鬱病で退職(または休職)する。しかもあんな大学出たてのペーペーまる出しの新人教師。のんきに「結果が出なくてズルズル落ちちゃうのよね〜。」なんて成績の心配してる場合じゃまっったくないぞ。とにかくこの女(あ、ついに女呼ばわり)無神経にもほどがある。心臓に毛がはえてんじゃないか?ていうか脳みそ入ってないんじゃないか?こんなズレた担任嫌じゃ。
それとこの主人公が一番リアルじゃない。あのあとどうなるのかわからないけど、とりあえず彼の行動も人間像もバラバラで、彼こそ架空の人物みたいだった。
と、いろーーんな感情を差し引きして☆3。観て良かった映画だったとは思う。(05/7/1)
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