[コメント] アメリ(2001/仏)
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この映画の化けの皮が剥がれるのは時間の問題だろう。ビデオ販売時には、評価はもっと低くなるに違いない。だって、これ、ひきこもりの自己完結ドラマですぞ? ましてロマンスなんてたいそうな代物ではありません。好きな人に声をかけてみる。多くの人が三秒で乗り越えてしまうその一線を、延々二時間かけてやっている、それだけなのだ。斬新な編集初体験の女子高生やらが小奇麗な表層に浮かされているのは、実にかわいらしいことですが。
マグロなままに野郎を受け入れることしかできなかったアメリは、精神的な処女、ナイーブなアイアン・メイデンである。この設定は少女漫画にも似た体裁をしているが、オタク野郎の願望に他ならない。相手のポルノ・ビデオ店に努める青年についても、一見、現実の王子様はそんなものだよと謳っているようで、実は清潔な純愛を夢見てもセンズリはやめられないオタクのエゴの体現なのです。その二人が結ばれるまでってのは、まさしくオタクの指人形、直径三センチ以内に起こっていることに他ならないでしょう? 作家は女ではなく、あくまで野郎、なんだかその前提が忘れられているのが、どうも不思議でならない。
パッと見は『マグノリア』という傑作群像劇を思い出したりもするが、そんなたいそうなものではない。アメリがやっていることは住居不法侵入を含む犯罪であり、モラトリアム少女のちょっと出過ぎたオイタに過ぎない。
もっとも、作家自身はそれらを自覚した上でやっている。
ジャン・ピエール・ジュネ…暗いのに何故か懐かしい、そんな夢を描き続けた作家。そんな暗い夢しか見られなかった体質の変人だって、たまには優しい夢を見たい願望があるのだな。それを人々に見せつけるにあたり、少なくとも誤魔化せない自分のラインは固守した、引きこもりな自分をさらけ出し、ぶつけたのだろう。その姿勢が潔く、自分としては、この映画を許してやって欲しいと、余計なお世話ながら思わずにいられない。
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