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[コメント] 仮面ライダーアギト PROJECT G4(2001/日)

観ている対象を完全に大人にしたライダー作品。子供はついていけないかもしれないけど、大人向きとして充分ライダーという素材を使えた形ともいえます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 平成ライダーシリーズでは数多く映画が作られている。だが、その中で最も完成度が高い作品は何か?と訊ねられたら、私はためらいなく本作を選ぶ。平成ライダーシリーズ第一作目にして、その頂点に立つ作品である。

 しかし、これだけ持ち上げておいてなんだが、実は本作はほかの作品と比べると、設定は貧弱ではある。他の作品ではどれを見ても“世界の危機にライダーが立ち上がる”。と言う地球規模の戦いが展開されるし、敵の姿も巨大なものが多い。“これは主人公には敵いそうもない”ものを出しておいて、仲間の力を集めて戦い、ぼろぼろになりながら勝利を得る。と言う、少年マンガの王道ノリで話が展開していくものが多いから。

 ところが本作は敢えてその形を取らなかった。本作では一つの研究室が作ったシステムを止めるまで。と言うレベル。とても小さな事件を扱っている。しかも時間的な位置づけもはっきりしていて、テレビシリーズの46話と47話の間に入る。テレビの一エピソードに過ぎないとも言える。

 しかし、派手さを排した本作の作りは、実に見事なものだった。外伝ではなく、正伝の一本故に、テレビ版の設定がそのまま生きており、テレビ版を観ている人だったら、設定上も物語も完全に納得できる出来。派手でない分、時間をかけて物語を練っていたのだろう。内容もテレビ版ではなかなか表現できなかった登場人物の内面にもしっかり踏み込んでいる。

 なにより本作でおもしろいのは、メインとなる主人公がテレビ版の主役でアギトでもある翔一ではないという点。一応この作品には主人公格が三人いるので、それぞれの戦いを描きつつ、メインを一人に絞る構成を取っているのだが、その中中心はテレビ版で野暮でコメディリリーフ的な存在のG-3Xの氷川にウェイトを持って行ったということだった。

 彼は要領は悪いがとにかく素直な上に真面目なキャラで、こう言うのは得てしていじられやすく(特にこの脚本家の場合は)、冗談の種にしかならないことが多いのだが、その真面目さと言うのを徹底的に掘り下げ、その不器用でまっすぐさこそが物語を紡いでいくと言う構成となっているのも評価高い。私なんぞもテレビ版では、主人公よりもこのキャラの方が好みだった位なので、これはとても心地良い。逆にこの映画版があったが故にテレビ版も再評価できたくらい。

(評価:★4)

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