[コメント] トレーニング・デイ(2001/米)
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きっと多くの方が「ベテラン刑事と新人刑事が衝突しながらも友情を築き、活躍!」というようなハリウッドな展開を予想していたと思う。自分もそうだった。しかし、これは違った。恐らく今までには無かったタイプの作品。単純に「面白い」という作品ではないが、オススメ出来る秀作。
この作品はあくまでも新米刑事一人の視点から描かれている。そのため、デンゼル・ワシントン演じるアロンゾもその時々に尊敬の目と疑問の目、軽蔑の目で映されている。演じる本人が「掴み所が無い人物」などというように口にしていたが、まさにその通りなのだろうと思う。善悪が見失われてしまう世界に飛び込んだ新人ジェイクの困惑した視線だ。ようやく理解出来て来たと思うと、突然裏切られてしまう。そして、この映画自体もその視点通り、観客は突き放されていて、掴み所を与えられない。アロンゾが果たして何者だったのか・本当にただの「悪人」だったのか、ジェイクはこれからどうするのか、たった一日(二時間程度)でジェイク(観客)が見せられた受け止めがたい混沌とした出来事。ラストの片手に銃を握りしめたまま自宅へと入っていくジェイクの姿も印象深かった。次々と予想を裏切る展開が一見乱雑にも取れがちだが、この脚本はなかなか見事だと思う。だが、同時にそういう難しい役柄を演じた二人にも拍手を送りたい。デンゼル・ワシントンについては、凶暴さとか冷徹さなどという表面的演技の面ではなく、上記の通り最後まで掴めない人物像を演じきった点を評価すべきだろう。イーサン・ホークも見事。「いい目をしている」という作品中のセリフもあるが、彼の目は本当に強い。次々と訪れる不測の事態を前に抱く複雑な感情とそれでも譲れない強い正義感を的確に伝えていた。
ただ、アカデミー賞で疑問に思ったのが、主演は明らかにイーサン・ホーク。確かに商業的には「デンゼル・ワシントン主演」で宣伝されるだろうが、主人公は先程の視点の話でも触れた通り、新米刑事ジェイクであろう。
余談だが、DVD収録未公開シーンにはいくつか興味深いものがあった。確かにどれもテンポを崩しそうなものではあったが、見るとまた一つ本編の印象が変わる内容を含んでいた。
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